サービスする人、される人
今月は弊誌と同時期にオープン!そして関西を代表する、蕎麦屋「土山人」グループを率いる「渡辺氏」との対談を記事にまとめました。(尚、取材は馳走侘助で行いました。)
杉原 佳尭 首都圏コンピュータ技術者協同組合専務理事/
首都圏ソフトウェア協同組合専務理事/帝塚山大学講師(国際金融論)
食道楽の関西においても圧倒的に東京に負けている分野がある。それが、蕎麦屋だ。コーヒー派?紅茶党?うどん好き?そば好き?は、永遠の選択だろう。もちろん、関西は薄ダシのシコシコうどんという話はある。しかし、関西には、関西の蕎麦屋があっていい。他の地域を模倣するのではなく、模倣される力を持ったニューウェーブな蕎麦屋が。それが、侘助を含めた土山人グループではないだろうか。
今回は、数件ある中でも夙川にあるお店に昼食を戴きに伺いました。戴いた昼膳は、くり抜いた柚子の中に旨酢のジュレを注ぎ、新鮮な湯葉にうにを添えた前菜の盛り合わせから始まった。旨酢がジュレになることで、とろけるまでに時間がかかり、旨みが口の中に広がる。酢の物の新しい提案かもしれない。次はかぶらのムース。とんぶりを上にまぶし芹を添えて季節の先取りという感じでやってきた。汁物は、コンソメスープに焼き色をつけた下仁田葱、イタリアン・ドライトマトが上にのる。葱の苦味がドライトマトで中和され、その焼き味が不思議とコンソメとあう。
口直しは、正月の野菜だと思っていたクワイをカステラにして。縁起のいい一品である。温菜は、揚げたエビ芋に白菜、ブロッコリーと、かに肉の餡かけ。それに生姜のだしを張ってでてきた。オーセンティックなコンビネーションだが、ブロッコリーが全体を若々しくすっきりとした味に仕上げているように感じた。刺身は、ヨコワとヒラメその抑えた味がそれらしい。メインのお蕎麦は、蒸篭にソテーされた牡蠣が3つ、同じくソテーされたエリンギ茸のスライスにゴマを塗してある。これは、よかった!私は無類の牡蠣好きだが、このような食べ方をしたことはない。蕎麦は洋風にも合うものなのだと実感した。そういえば、ブルターニュは、蕎麦の産地だ。この蕎麦のよさはそれだけではない。実は、食べた後にもイマージュが残る。すなわち、蕎麦つゆに蕎麦湯を注ぐという最後の楽しみだ。乳白色の蕎麦湯と残った牡蠣の旨み、醤油のハーモニーがまるで甘酒のような色の中に海と山の恵みの深さを残している。このような蕎麦を嫌うひともいるだろうが、私は支持する。今までの食材を用いながら、基本を押さえ、且つ新しさを感じるからだ。最後に少しこげる程度に炙られた大根とうすあげのごはんにしいたけの海老しんじょうが共に供された。冬の大根は、煮ても焼いても旨いものである。
デザートは、クレープにカスタードを塗って重ねたミルフィーユにはちみつとバニラアイス。その素朴な組み合わせがとてもいい。とくに小麦粉よりもモチモチとしたそば粉クレープの舌触りがなつかしい昔を感じさせる。
聞くところによると蕎麦屋の業界も技術革新が行われどこでも石臼が手に入り、使われるようになったという。もちろん価格破壊の世の中で、値段もかなり安く。そして、挽きたてのそば粉がどこでも使えるようになる。挽きたての粉につなぎは必要ない。だから十割そばがスタンダードになると、ここのご主人はいう。そうすると、農家から蕎麦屋に直接そば粉が届きすぐに私達の口に入るようになる。これもある種の流通革命であり、それぞれのそば粉の食感や味、産地など、
今話題のトレーサビリティが著しく吟味される。侘助では、主に黒姫と丸岡の蕎麦を仕入れているそうである。そして蕎麦がまたディープな趣向となるのである。こだわりと言う言葉は簡単だが、このように世の中の変化である技術革新と流通革命に根ざして蕎麦文化を広めてゆくこと。これが文化であり、時代の担い手である。だから、模倣を生んで行く。
また、器も常滑の陶芸家に依頼しているが、それも名のあるものというよりも、そのお弟子さんたちが、腕を磨くための練習として、店の食器一切の創作を依頼し機会を提供している。私は、この姿勢に大賛成である。高価な絵を買うよりそのお金で、若い芸術家の作品を大量
に買ってあげる方がよほど芸術に貢献すると兼ねてより主張しているからだ。
この侘助のように、また風のように、蕎麦屋に留まらず新しいことに挑戦する姿勢、はやりを追いかけるのではなくチャレンジしつづけること、これが、反対にフォロワーを生み模倣を生んで行く。模倣を生む力、それは創造できる力でもある。
夙川 馳走侘助
電話:0798-35-5539
営業時間:昼11時半〜14時半
/ 夜17時半〜22時(平日)〜21時半(日、祝)
定休日:水曜日 住所:西宮市羽衣町10-19
芦屋 土山人
電話:0797-35-8100
営業時間:11:30〜14:30、17:30〜21:00(売り切れ次第閉店)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休)
住所:芦屋市川西町7-3 芦屋川ビューハイツ1F
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